てんしょう 「しーっ。」
てんしょう 「 聞こえた?」
プリ子 「 うん、聞こえた。」
プリ江 「 ゴーンっていった。」
" ゴーン "
プリ子 「 あっ、また、聞こえた。」
ハナ 「 ハナも聞こえた!」
大晦日の夜、23時50分。
" 一度、除夜の鐘聞いてみたい。" と言うプリ子の要望に応える為、日中みんなで昼寝をし、頑張って夜中まで起きていました。
" ゴーン "
窓を開けると、冷たい空気が流れ込んできました。
そして、静まり返った街の遠くから、除夜の鐘の音が、少しだけ大きく聞こえてきました。
" ゴーン "
プリプリ姉妹もネコのハナちゃんも、神妙な面持ちで聞いています。
" ゴーン "
プリ子 「 ねえ、ママ。
除夜の鐘、108回なるんでしょ?」
てんしょう 「 うん、そうだよ。
でも、108回全部聞くの大変だから、年が明けたら、おやすみなさいしようね。」
みんな 「 はーい。」
てんしょう 「 あと、3分で来年になるから、年明けの10秒前になったら、カウントダウンしようか。」
みんな 「 うん!」
てんしょう 「 パパ、寝てるから、静かにね。」
みんな 「 はーい。」
3人は声を潜めました。
パパ夫は、水平線から昇る初日の出を子ども達に見せたいが為に、先に寝てしまっていました。
てんしょう 「 あと1分で年が明けるよ。」
プリ江 「 もうすぐだね。ドキドキする!」
プリ子 「 そうだね。ドキドキ!」
ハナ 「 ドキドキ!」
てんしょう 「 あと、・・・30秒・・・あと20秒・・・。」
みんなで、デジタル時計の数字を見ていました。
てんしょう 「 さあ、みんなで。」
みんな 「 10・9・8・7・6・5・4・3
・2・1!
あけましておめでとう!!」
てんしょう 「 しーっ。」
プリ江 「 そうだった。」
プリ子 「 新しい年になったね。」
てんしょう 「 みんな、今年も元気に楽しく過ごそうね。」
みんな 「 はーい。」
てんしょう 「 さ、みんな、初日の出見に行くから、寝ましょう。
朝、5時半に起こすよ。」
みんな 「 はーい、おやすみなさーい。」
てんしょうは3人を寝室に行かせ、初日の出を見る海に持っていく物を準備していました。
「 てんしょうさん、あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。」
天使さんのおじいちゃんでした。
てんしょう 「 あけましておめでとうございます。
こちらこそ、よろしくお願いいたします。
今年はハナちゃんとおじいちゃまにとって、良い年になります。そう信じています。」
おじいちゃん 「 ありがとうございます。
私も、そうであると信じます。
てんしょうさん、あなたもご家族も良き年になります。
神様が、その様に仰っておられました。」
てんしょう 「 神様が?」
おじいちゃん 「 はい。先程、病院に行って参りました。
その時に、神様が仰いました。
あなたは、私達を家族の様に思ってくださってる。
私もハナも、あなたとご家族には、言葉では言い尽くせないほどの感謝をしています。
その事を神様はご存知なのです。」
てんしょう 「 ありがとうございます。
そんな風に思ってくださって・・・。
あの・・・、ハナちゃんのお体、いかがでしたか?」
おじいちゃん 「 はい、前に神様が仰っておられた様に、3月中にはハナの魂を戻せそうです。
もう少し、もう少しなんです。」
てんしょう 「 順調なんですね。良かった。」
おじいちゃん 「 ありがとうございます。」
天使さんのおじいちゃんの優しい目には、涙が浮かんでいました。
準備を終えたてんしょうは、もう一度窓を開けて耳を澄ましましたが、除夜の鐘の音はすでに無く、辺りは静寂に包まれていました。
夜空を見上げると、月が青白く輝いていました。
明日に続きます。
今日もお読みいただき、ありがとうございます。