春分の日の前日。



この日、修了式で午前中に帰ってきたプリプリ姉妹は、ずっとハナちゃんの側にいました。

ハナちゃんもプリプリ姉妹から離れようとしませんでした。



3人は、あまり残されていない時間を、名残惜しそうに寄り添っていました。





お昼ご飯の支度をしているてんしょうの元に、天使さんのおじいちゃんが来られました。


おじいちゃん 「 てんしょうさん、お話があります。

少しよろしいでしょうか。」

てんしょう 「 ハナちゃんの事ですね。」

おじいちゃん 「 そうです。」


てんしょうは手を止め、天使さんのおじいちゃんに向き合いました。


おじいちゃん 「 明日の午前中に、こちらまで神様がいらっしゃいます。

ハナの魂をネコの体から出してくださるのです。」

てんしょう 「 そうですか・・・。午前中・・・。」

おじいちゃん 「 この事を、ハナとあなた様のお子に話さねばなりませんが、どの様に伝えたら良いものかと・・・。」

てんしょう 「 そうですね・・・。」

おじいちゃん 「 神様は、プリ子ちゃん達から、ハナと過ごしたという記憶の部分を取り出し、魂も本来のネコのままの、このネコと過ごした記憶に書き換える事ができると仰っておられました。

ハナには、長い眠りの中の夢として残る様ですが・・・。」

てんしょう 「 記憶の書き換え?

・・・プリ子達にとって、ハナちゃんとの思い出は宝物になっています。

別れはとても辛い事だと思いますし、今は、お別れしたあとの事の想像ができません。

でもプリ子達には、それを乗り越えていって欲しいと思います。」

おじいちゃん 「 では、記憶は書き換えないと・・・。」

てんしょう 「 はい。

ハナちゃんとの思い出は、これからのあの子達にとって、とても大切なものになると思います。

消してしまうなんて・・・。」

おじいちゃん 「 てんしょうさん、ありがとうございます。

ハナは、あなた様の元で過ごす事ができて、本当に幸せでした。

私も、ハナの事は忘れないで欲しいと思っていました。」

てんしょう 「 私もハナちゃんの事を、自分の子どもの様に思っていました。

忘れてしまうなんて、そんな事、考えたくありません。」




「 私も、てんしょうさんがその様にお考えになると思っておりましたよ。」




おじいちゃん 「 神様・・・。

明日ではなかったですか・・・。」

てんしょう 「 か、神様・・・?

あの、はじめまして・・・。」


突然の事で、てんしょうは心の準備ができていませんでした。


神様 「 驚かせてしまい、申し訳なく思います。

ハナちゃんの魂は、明日引き取りに来ますよ。

今日はあなたのお子達へ、できる事はないかと話に来ました。

あなたのお気持ちはよく分かりました。

やはり、ハナちゃんがあなたの家に行く様に、暗示をかけて良かった。」

てんしょう 「 ハナちゃんに暗示を?」

おじいちゃん 「 そうだったのです。

神様は、ハナがてんしょうさんの家に行く様に、導いてくださっていました。」

てんしょう 「 では、プリ子達がハナちゃんの存在に気付いた事も・・・。」

神様 「 偶然ではありませんよ。」

てんしょう 「 神様、プリ子達が目には見えないご存在を見える事は、ご存知でしょうか。」

神様 「 知っておりますよ。

あなたはお子達に、私から直接、ハナちゃんの事を話して欲しいとお思いですね。」

てんしょう 「 はい。お話していただけたらと・・・。

プリ子達は、ハナちゃんとの別れの意味は分かっています。

ハナちゃんの幸せの為と言う事も分かっています。

でも・・・。」

神様 「 分かっておりましたよ。

これから、その話をお子達に話しましょう。」

てんしょう 「 今・・・ですか。」

神様 「 そうです。

明日にはハナちゃんの魂を、ハナちゃんの体に戻しますからね。」

てんしょう 「 ・・・では、子ども達を呼んできます。

少しお待ちいただけますか?」






子ども部屋のドアを開けると、寄り添って座っている3人がいました。

3人の背中が震えて見えました。

子ども達は、子ども部屋の片隅で、静かに泣いていたのでした。







明日に続きます。

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